今回は、2023年公開のアメリカの映画『レッド・ロケット』を紹介します。
本作を手がけたのは、『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』や『ANORA アノーラ』で知られるショーン・ベイカー監督。テキサスを舞台に、世間の「普通」からはみ出した人たちの日常をユーモアたっぷりに描いた人間ドラマです。
16mmフィルムならではの、温かみとざらつき感が同居する映像と、ノスタルジックな風景も見どころのひとつ。
この記事では、ネタバレを避けながら、おすすめしたい人や本作の魅力、見どころを紹介しています。「この映画、観てみよう!」と思うきっかけになれたらうれしいです。
この映画のひとこと感想…

くすっと笑えるのに、しみじみした気持ちになる
不思議な魅力のある映画でした。
🎬 FILM INFO | 作品情報
作品名:『レッド・ロケット』(英題:Red Rocket)
製作:2021年/アメリカ
上映時間:130分
年齢制限:R18+
配給:トランスフォーマー
監督:ショーン・ベイカー
主なキャスト:
サイモン・レックス(マイキー役)
ブリー・エルロッド(レクシー役)
スザンナ・サン(ストロベリー役)
あらすじ
すっかり落ちぶれた元ポルノ俳優のマイキーは、一文無しの状態で故郷・テキサスへ戻ってきます。猛反対されながらも、別居していた妻と義母が暮らす住まいに強引に転がり込んだマイキー。しかし、長いブランクや過去の経歴もあり、仕事探しはうまくいきません。昔のコネでマリファナを売りながらその日暮らしを続けていたある日、ドーナツ店で働く女子高生と出会い、マイキーの中である野望が芽生え始め…。
どこか憎めない主人公・マイキーを中心に、一筋縄ではいかない人たちが織りなす人間模様を、独特のユーモアで描いた作品です。
こんな人におすすめ
派手な展開よりも、日常のなかで繰り広げられる人間ドラマや、ノスタルジックなアメリカの田舎町の空気感に浸りたい人におすすめの一本です。
観終わって心に残った3つのこと
なぜか憎めないマイキー
最初からずっと印象的だったのが、元ポルノ俳優の主人公・マイキーの強烈なキャラクターでした。
彼は見栄っ張りで、周囲のこともお構いなしに思い立ったら突っ走ってしまうタイプ。
なのに不思議と嫌いにはなれず、気づけば彼の行動を見守っている自分がいたんです…。
なぜなら、どんな状況になっても根っからのポジティブさだけは失わないから。
どうしようもないおじさんなのに、どこか人間臭くて憎めない。そんなマイキーの唯一無二な魅力が、物語を最後まで飽きることなく引っ張ってくれているように感じます。
『レッド・ロケット』を彩る街並みと色使い
本作を観ていて目を奪われたのが、テキサスの風景や場面ごとの色使いの美しさです。田舎好きの私は、気づけばテキサスの“エモい”街並みのとりこに。
ドーナツ店で働くストロベリーが登場する場面も見どころのひとつです。お店のレトロでポップな佇まいや、店内に並ぶ海外らしいカラフルなドーナツを見ていると、「可愛すぎる」と思わずにやけてしまいます。店先に立つストロベリーの姿も相まって、まるで一枚の絵のよう。
この作品は16mmフィルムで撮影されていて、その少し粗めで味わいのある質感が、この映画の世界観をより引き立てていました。
改めてショーン・ベイカー監督は、人物だけでなく風景や色彩を切り取るセンスにも長けている人だと感じます。物語を追うだけではもったいない。画面の隅々まで味わいたくなる映像美でした。
人間のどうしようもなさを見つめる視点
この映画は、どうしようもない登場人物たちを裁こうとはせず、いい意味で「投げっぱなし」です。だけど、そのまなざしは決して甘いものでもない気がします。
主人公のマイキーは、良くも悪くもポジティブで、周りのことは考えず自分の欲望のままに突き進んでしまう人。いつまでも過去の栄光を忘れられず、再起を夢見る姿には、「この人の頭はお花畑だ…」と呆れてしまうほどです。
一方で、別居中だった妻や義母も決して聖人ではありません。それでも、カメラは誰かを一方的に非難することも、必要以上に擁護することもありません。その姿勢は、ある意味で残酷なまでにリアルな人間の姿を映し出しているように感じます。
そんな登場人物たちのなかで、私がとても癒やされたのが、妻の実家で飼われているわんちゃん。クセの強い人ばかりが登場する作品だからこそ、その無垢な存在がまるで天使のようでした。
人はだれでも、状況によってはだめになってしまうことがあります。だからこそ、彼らの姿は決して他人事には思えず、その人間臭さが妙に身に沁みるんです。
まとめ
『レッド・ロケット』は、世間の「普通」からはみ出した人たちの日常を、ユーモアと鋭いまなざしで描いた作品でした。
そんな人間模様とは対照的に、本作を彩るテキサスの雄大な風景やノスタルジックな街並みは、登場人物たちを静かに、そしてどっしりと包み込んでいるようです。
人間のどうしようもなさにしみじみしながらも、どこか懐かしさを感じる風景に心がほどけていく。そんな不思議な魅力のある一本でした。

コミカルなのに、少し切ない。
その余韻が、テキサスの景色とともに心に残ります。


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