今回は、2024年公開のカナダの映画『アイ・ライク・ムービーズ 』を紹介します。
長編映画デビュー作となった、チャンドラー・レヴァック監督の自伝的要素を色濃く含んだ注目作。
『リトル・ミス・サンシャイン』を観たあとに似た、ほろ苦いのに心が温かくなるようなやさしい余韻も、個人的に推したい魅力のひとつです。
この記事ではネタバレを避けながら、おすすめしたい人や本作の魅力、個人的に心に残ったポイントを紹介しています。「この映画、観てみよう!」と思うきっかけになれたらうれしいです。
この映画のひとこと感想 | 作品情報

映画オタクでひねくれ者の主人公に、自分を重ねて
どぎまぎしながら楽しめる映画でした。
🎬FILM INFO | 作品情報
作品名:『 I Like Movies アイ・ライク・ムービーズ 』(英題:I Like Movies)
製作:2022年/カナダ
上映時間:99分
配給:イーニッド・フィルム
監督:チャンドラー・レヴァック
主なキャスト:
アイザイア・レティネン(ローレンス役)
ロミーナ・ドゥーゴ(アラナ役)
クリスタ・ブリッジズ(テリ役)
パーシー・ハインズ・ホワイト(マット役)
あらすじ
カナダの田舎町に暮らすローレンスは、大学進学をきっかけに人生を変えたいと願う、人付き合いが苦手な高校生。映画を愛する彼の夢は、ニューヨーク大学へ進学しトッド・ソロンズから映画を学ぶこと。唯一の友人マットとつるむ日々を送りながら、学費を貯めるために馴染みのビデオショップでアルバイトを始めたローレンス。そこで元女優志望の店長アラナらとの交流を通して、少しずつ新たな友情を育んでいきます。しかし、自分の未来への不安から大切な人の心を傷つけてしまい…。
レンタルDVD最盛期のカナダで、不器用な映画オタクの少年が人とのつながりや将来への葛藤を抱えながら成長していく様子を描いた作品です。
こんな人におすすめ
観終わって心に残った3つのこと
自分を重ねずにはいられなかったローレンス
映画が大好きで、こだわりも人一倍強いローレンス。けれど、その思いが空回りして、歩み寄ってくれた人との間にも壁をつくってしまいます。その姿は自分が10代だった頃とも重なり、言葉ではうまく表現できないもどかしさを感じました。
映画が大好きなのは素晴らしいこと。だけど、なんとなく舐められたくないという気持ちが裏目に出ると、つい映画の知識をひけらかすような態度をとってしまい周囲から浮くはめになります。
本当はだれかと分かり合いたい。でも気持ちをうまく伝えられないせいで、人を遠ざけてしまう。そんなローレンスの素直になれない言動にも、「わかるよ…」と共感しながらどぎまぎ。不器用な彼のゆくえが心配で、気になって仕方ないんです。
そんなこんなで、最初は親のような気持ちで観ていましたが、ラストまで見届けたときには少し心がほどけたような感覚に。こちらまで一喜一憂しながら最後まで見守りたくなる、お騒がせながらも愛おしい主人公でした。
🎬製作秘話 |監督の実体験に基づいたストーリーだった!
実は主人公のローレンスは、10代の頃のチャンドラー・レヴァック監督の姿をもとに生まれた登場人物。映画オタクだったことや、思い返すとちょっと恥ずかしい厨二病的な言動、監督自身が実際に体験したことまで、ローレンス少年に投影されているそうです。監督は女性ですが、あえて主人公を男性に変えて描くというアイデアも一風変わっていておもしろいですよね。性別という次元を超えて、ローレンスの悩みや不器用さがこれほどリアルに感じられるのは、監督自身の経験が息づいているからなのかもしれません。
平成レトロと映画愛にあふれた温かい世界
この作品を観ていて何より心をつかまれたのが、画面のあちこちに散りばめられた「平成っぽさ」や、映画愛にあふれた工夫です。ローレンスのバイト先にずらりと並ぶ映画DVDや、DVDショップの香りが漂ってきそうな空気感、懐かしの大きなパソコン。平成生まれで映画好きな私のテンションが上がる要素がたっぷりで、DVDを借りに行っていた頃の記憶がよみがえりました。
監督やスタッフも映画を愛し、レンタルDVDショップに通っていた人たちなのかな。そう思えるほどあちこちから作り手の映画への愛情が伝わってくるのが、映画好きとしてたまりません。
さらに、手作り感のある演出やふふっと笑ってしまうコメディ要素も、今作の魅力のひとつ。どこか素朴で味わいのある演出ににやりとしてしまうシーンもあり、重たいテーマを扱いながらもユーモアがほどよく散りばめられているおかげで、最後まで心地よく観られます。
ほろ苦さはしっかり残しながらも、重たくなりすぎない。その絶妙なバランスが、観終わったあとに、懐かしさと温かさが入り混じったようなやさしい余韻を残してくれますよ。
ローレンスに居場所をくれた人たち
トラブルメーカーの烙印を押されかねないローレンスですが、周りの人たちは彼に対して「ひとりの大切な人間」としてきちんと向き合い続けます。
母親のテリは、一筋縄ではいかない息子への接し方に苦悩しながらも、彼のことを一番近くで見守り支えてきた存在です。あるシーンでは、過去のつらい出来事をともに乗り越えてきた母親の強さがひしひしと伝わってきます。ローレンスを心から愛し寄り添い続けてきた母親の優しさに、目からあふれる涙が止まりませんでした。
ビデオショップの店長アラナや友人のマットも、無理にローレンスを変えようとはしません。衝突やすれ違いがあっても決して彼を見捨てず、それぞれの距離感で向き合い続ける姿には胸が熱くなります。
自分の存在を認め、見守ってくれる人たちがいる。そう思えるだけで、人は少しずつ前を向いていけるのかもしれません。ローレンスにとってビデオショップや周りの人たちは、映画だけではない「居場所」をあたえてくれた存在だったように感じます。
まとめ
今回は、映画『アイ・ライク・ムービーズ』について、じっくりお話ししました。
ひねくれた言動を繰り返してしまう主人公にやきもきしながら、「あれ、これって自分にもあてはまるところなかったっけ…?」と身につまされる。そんな少し面倒くさい彼を見捨てずにいてくれる周囲の人たちの優しさには、じわじわと胸が熱くなります。
レンタルDVDショップの懐かしい空気感と、映画好きの心をくすぐる遊び心もたっぷり。ほろ苦い青春のなかに少しだけ前を向けそうな光を感じられる、やさしい余韻の残る一本でした。

久々にレンタルDVDショップで映画発掘してみようかな。
あの頃のわくわく感がよみがえってきました!



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